2018年11月26日月曜日

             損保9条の会 第15回講演会

憲法を知り、自立した市民として、それぞれが主体的に行動することー今を生きる者としての責任を果たし誇りを持つ
  ~伊藤 真さんの講演「日本国憲法の価値を考える」

11月23日(金・祝)午後2時から北区王子北とぴあにて、伊藤塾塾長、日弁連憲法問題対策本部副本部長、9条の会世話人、弁護士・伊藤 真さんにより開催されました。
 会場一杯の156名の参加、損保9条の会あいおいからも26名の方が駆け付けました。
● 戦争を知らない戦後生まれの初めての総理大臣、安倍首相が3選されました。立憲主議を軽視し議論しない。ウソとごまかしと開き直り、自分の発言に責任持たない。過去を改竄し未来を壊している。
● 安倍の改憲発言「自衛隊に誇りをもって任務遂行してもらうため」は災害救助のためではない。「国民の負託により自衛隊を憲法上の組織に格上げして米国のために血を流すことを厭わない組織」にすることにある。
● 7600人を超える原告、22の地裁、25件の提訴により闘っている安保法制違憲訴訟は、立憲主義と民主主義を取り戻す、司法の在り方を根底から問う、もの。同時に日本を再び戦争する国にしない「市民運動」の一環でもある。
● 憲法改正の際の国民投票制度について、59%が知らないと答えている。最低投票率の定めなし、運動期間が短い、運動のCM,資金などの規制がないなど現在の国民投票法は問題多く、国民に対して多元的な情報や意見が平等に与えられ、国民が熟慮するための十分な前提が確保されるまで改憲は決して許すべきではない。
● アメリカ海兵隊の新兵訓練の目的は、「人を殺せるようにする」ことにある。殺人を任務とする、人を殺せる人間に作られていく。アメリカ帰還兵の現実は、戦死者以上の自殺者、麻薬、犯罪、貧困に苦しむ。PTSD,うつ病に苦しみ続けている。
● 憲法9条1項2項を残しながら、新たに9条の2として「前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な措置をとることを妨げず、そのための実力組織として…自衛隊を保持する」という自民党自衛隊明記案について、阿部首相は「今までと何も変わらない」と述べているが、ウソはいけない。
 先ず「後法(新法)優先の原則」により、9条が残されていても、追加された「9条の2」が優先され、9条に反することも許されることになる。「必要な措置」という曖昧な要件が無制限に拡大解釈される危険性がある。自衛隊が憲法上の組織に格上げされ、民主的正当性を背景に強い権威と独立性を持ちかねない。「国防」が憲法上、新たな「人権制約の根拠」になる。
● 自民党自衛隊明記案は、安保法(戦争法)違憲の疑いもなくして、世界で自由
に自衛隊を実質的な軍隊として使いたい、というのが本音。2015年安保法以後の、海外で「人を殺し、殺される」自衛隊を明記して9条2項を空文化することにある。憲法の非暴力平和主義の理想を捨て去ってしまってよいのか。自衛隊明記の後についての想像力が必要。
● 安保法制も含めて、これらはすべて、私たちの平和を願う人格権を侵害するものであり、戦争の危険を高める。日本はこれらと決別するために、憲法を制定して、平和な立憲民主国家を目指したはずではないか。憲法9条は、こうした事態に近づかないようにするための防護壁だったのではないか。今こそ戦争を阻止するためのあらゆる力の結集が必要。
● 日本国憲法の根本価値は憲法13条の個人の尊重と幸福追求権。一人ひとりを大切にすることと同時に多様性を受け入れて共生できる社会をめざす。
● 日本国憲法の基本原理は、立憲主義に立脚し、国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義。すべての人々が個人として尊重されるために、最高法規としての憲法が、国家権力を制限し、人権保障をはかるという立憲主義の理念を基盤としている。
● 今、私たちに必要なこと。この国をどんな国にしたいのか、私たち自身が覚悟を決めること。国は与えられるものでなく、私たちが創り上げるもの。熱気に流されない冷静さを保つこと。憲法を知り、自立した市民として、それぞれ主体的に行動すること。おかしいことには、おかしいと気づいた者から委縮しないで声をあげること。(NK)